丹波新聞 1999年(平成11年) 11月18日(木曜日)

篠山でヒラメ栽培 陸で海の魚育てる 
 高級魚として知られるオニオコゼやヒラメが丹波でも飼育できる」微生物の持つ自浄作用を利用し、環境修復に取り組む株式会社バイコム(米田哲社長、本社大阪市)の篠山研究所=同市東吹=で、海に住む魚の繁殖実験が行われている。同社は、水質悪化を防ぐ善玉微生物を増やす技術を開発。これによって、水の入れ換えなしに魚を養殖することが可能になった。同社は、「人工海水さえ作れぱ、陸で海の魚を養殖できます。丹波篠山プランドで、ヒラメやオコゼを売り出してみては。将来、日本人のタンパク源を支える水産技術になると思います」と話している。
 同社が開発したのは、魚のフンやエサの残りカスから発生するアンモニアや窒素を分解する微生物(もともと自然界にいる)を培養する技術。
 善玉微生物の働きによって、養殖の際最も問題となる水間題を解決した。善玉微生物が水質劣化を防ぐため、水槽内の水は循措が可能になり、ろ過によって不純物を取り除くことで、澄んだままの状態を保つことができるという。
 同研究所では、ヒラメや最も養殖が難しい魚のひとつにあげられるオコゼを陸上で繁殖させ、成魚にする研究を行っている。
 ヒラメの場合、八月に百グラムの稚魚二百五十匹を養殖水槽(直径九メートル、五トン)に投入し、エサと水温などを管理。現在、四百グラムから五百グラムに成長しているという。
 海で通常一キロに育つまでに1年半かかるものを、陸上栽培することで一年に短縮でき、さらに、成魚になるまでの稚魚の生存率も、九五%を越え、養殖技術の革命として注目を集めている。
 同社では将来は篠山に、いろいろな魚の稚魚を裁培するセンター的なものを作りたい。産地直送なら『山地直送』です。味も甘みが有っておいしいと評判をいただいています。篠山の水で育てた「篠山ひらめ」を商品化しても面白いのではないでしょうか」と話している。


 赤潮の被害に悩まされていた宮城県・気仙沼湾の漁師たちが、十年前から上流の山に植林を姶め、その成果が実ってきれいな海がよみがえり、カキ養殖が盛況を呈してきた、という記事を日本経済新間(14日号)で読んだ。
▼それで思い出したのは、先日トルコ内陸部のアナトリア平原を旅した時の光景。山は土と岩だらけで、低木が申しわけ程度にしか生えていない。平地もひょろっとしたユーカリの木が頼りなげに見られるだけ。二、三日滞在しただけでも、落ち着かない気分になった。
▼しかし考えてみると、山が茶色いのはトルコに限らない。中国やアメゾカでもごく普通のことだ。日本のように、市街地の続く東海道新幹線沿いでさえ青々とした山が続くのは、外国人たちには驚異に違いない。琵琶湖から出る瀬田川の南にある田上山は、古代から下流の奈良や京都の大きな寺社の建設用に、ヒノキや杉がどんどん切り倒されて禿げ山になってしまった。ひん発する水害対策として明治時代から懸命の植林が始まったが、尾根筋はまだまだ傷跡が残っており、元の美林に戻るにはなお百年以上かかるという。
▼国土の津々浦々まで森林を絶やさないできた先人の努力には、頭が下がる。「丹波の森」も、丹波の住民のためだけにあるのではない、ということをかみしめたい。(E)

  遊びながら学ぶ英語
 
 篠山市東吹のバイコム研究所を取材した。
 栽培の理屈は極めて簡単。人工海水を作り、水質を管理(海に近い状態にする)すれば、あとは適温で栄養を与えるだけだ。
 魚の面倒は養殖の専門家が二人で見ているものの、養殖技術に特殊な所はなく、抗生物質の類も一切使われていない。
 この技術は「閉鎖循環式陸上養殖」と呼ばれ、食料不足や水質悪化が懸念される二十一世紀の新たな水産の分野として注自を集めているそうだ。
 大分県の上津村ではこの技術を使い、廃校を利用してヒラメを栽培。「森のヒラメ」と名付け、村おこし商品として目下売り出し中だ。話題性も手伝って売れ行きは好調だそうで、味もいいと評判になっている。
 ただ、水温を保つための電気代がかかり、今のところ、「海」物の方が市価はやや安いそうだ。同社は、安全性に疑問を持つ人のために、日本食品分析センターに依頼し、安全性に問題が無いというお墨付きをもらう手続きを進めている。
 近い将来、天然」でも「養殖」でもない「健康食品」として「陸」生まれあ魚を売り出したいとの意向だ。「新たな水産の一分野にしたい」−。社員数たった13人の小さな会社の技術が、漁業のあり方を変えようとしている。
 人類を救うのはもう少し先かもしれないが、オコゼの天ぷらが食卓に並ぶ日は近そうだ。(足立)

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