日本刀の分類
@刃長による分類 A製作年代による分類 B生産地による分類 C五カ伝による分類
日本刀の分類
日本刀は、それにについて特別な知識を持ち合わせていなくても、充分人を引き付ける魅力を持っていますが、鑑定するための正しい知識を備えればますます興味が深まります。分類方法には寸法、形状、時代、生産地、作風、作者銘などがあり、これらを組み合わせて鑑定をするのですが、高度な鑑定には非常に細かな分類が必要です。ここでは刀剣鑑定の大原則ともいうべき@寸法A時代B生産地C代表的な生産地五カ国による分類を紹介することにします。
@ まず最初に、長さによる分類をみてみましょう。長さは刃長を意味しており、柄(茎=なかご)の部分を入れた全長ではありません。
原則として、30p以下を短刀(たんとう)、30〜59p台を脇指(わきざし)、60p以上を刀と呼んでいます。ただし、それに形状の分類方法を加味して太刀、鑓、長刀(なぎなた)の種類があります。刀と太刀の区別は、茎に刻んである作者銘が刃を下にして腰に佩いた時外側に刻んであるものを太刀といい、刃を上にして腰に指した時外側に刻んであるものを刀といいます。ただし例外もありますし、作者銘のない無銘のものは作られた時代や形状で総合的に判断し、分類しています。
刃長による分類
種 類 寸 法(p) 寸 法(尺寸分厘)
短 刀 1〜29.9 0.33〜9.87
脇 指 30.0〜59.9 9.90〜19.77
刀・太刀 60.0〜 19.80〜
Aつぎは製作年代による分類です。我が国の鉄製利器の歴史は古墳時代から始まります。日本刀と一般に呼ばれる湾曲した刀剣の誕生する以前の刀剣を上古刀ともいいますが、日本刀の誕生する平安時代初期から天正末(1595)までを古刀(ことう)、慶長(1596)から享和(1803)までを新刀(しんとう)、文化(1803)から慶応3年(1867)までを新々刀、明治以降に出来た刀を現代刀と呼んでいます。
製作年代による分類
| 呼 称 | 時代(年号) | 時代(西暦) | 備 考 |
| 直刀(上古刀) | 古墳時代〜大同3頃 | 707頃まで | |
| 古刀 | 大同4〜元亀3 | 806〜1572 | |
| 新刀 | 天正1〜慶応3 | 1573〜1867 | 文化元年〜慶応3年まで新々刀ともいう |
| 現代刀 | 明治1〜平成 | 1868〜現代 |
B次は生産地による分類です。五畿七道がこれにあたります。五畿とは京都に近い、山城・大和・河内・和泉・摂津の五カ国のことです。現在でも畿内という言い方をしますが、もともと中国で、帝都を中心とした五百里四方の地をいったのが語源です。七道はT北陸道(七カ国)U東山道(十三カ国)V東海道(十五カ国)W山陽道(八カ国)X山陰道(八カ国)Y南海道(六カ国)Z西海道(九カ国)のことです。五畿七道には本州、四国、九州の全土が含まれます。ただし、全体でみるとその生産量には高低があり、なかには現在まったく遺品にその国の刀工作品を見出せない例もあります。また時代による日本刀生産の栄枯盛衰史は物語としても、産業史としても胸をうつものがあります。国ごとの刀工作品にはそれぞれ共通する作風があり、さらに一門と目される刀工群にはいっそう顕著な共通の特徴があります。これらの特徴の分類方法の代表的なものに「五カ伝」があります。特徴は刀剣の姿や形、地鉄(じがね)、刃文(はもん)、銘振りなどにあらわれます。分類方法はこれらにも及びます。
生産地による分類
| 五畿七道 | 国 名 | 備 考 |
| 畿 内(五カ国) | 山城、大和、摂津、河内、和泉 山城 | 大和は五ケ伝のうちの一つ。 |
| 北陸道(七カ国) | 越後、佐渡、越中、加賀、能登、越前、若狭 | |
| 東山道(十三カ国) | 羽後、羽前、陸奥、陸中、陸前、磐城、岩代、下野、上野、信濃、飛騨、美濃、近江 | 美濃は五カ伝のうちの一つ。 |
| 東海道(十五カ国) | 常陸、安房、上総、下総、武蔵、相模、伊豆、駿河、遠江、三河、尾張、伊勢、伊賀、志摩、甲斐 | 相模は五カ伝のうちの一つ。 |
| 山陽道(八カ国) | 播磨、備前、美作、備中、備後、安芸、周防、長門 | 備前は五ケ伝のうちの一つ。 |
| 山陰道(八カ国) | 丹波、丹後、但馬、因幡、伯耆、出雲、石見、隠岐 | |
| 南海道(六カ国) | 紀伊、淡路、讃岐、伊予、土佐、阿波 | |
| 西海道(九カ国) | 筑前、筑後、豊前、豊後、肥前、肥後、日向、大隅、薩摩 |
C最後は代表的な生産地五カ国の刀工達の作風による分類です。「五カ伝」といいます。日本刀の製作技法は古刀期にほぼ完成をみていて、新刀期はそれらを手本に製作することが多くなりました。古刀期においてもそれぞれの国へ刀工が移住することなどにより、技術交流がなされたと考えられ、作風に類似性がみられますので、まず五カ伝の特異性である原則を押さえておき、全体や部分の類似性から個々の刀工の特色が浮かび上がってくるように鑑賞することが基本です。五カ伝の分類法の特徴はこの中に日本刀の特徴のすべてが含まれているといって過言でない点にあります。微細に眺めるとその特徴は多岐にわたりますが、ここではほんの触りだけを紹介することにします。
五カ伝による分類
| 五カ伝 | 特 徴 | 古刀期の著名刀工 | 新刀期の著名刀工 |
| 山城伝 | 直刃(すぐは=直線的な刃文)が多い | 三条宗近、来国俊、来国光など | 梅忠明寿、肥前忠吉、伊賀守金道など |
| 大和伝 | 柾目肌(まさめはだ=柾目板のような鍛肌)が基調 | 千手院一類、当麻、手懸など | 越前康継、仙台国包、南紀重国など |
| 相州伝 | 乱れ刃に沸(にえ=焼刃のなかに見られる細かい粒)が多い | 新藤五国光、正宗、貞宗など | 繁慶、直胤、清麿など |
| 美濃伝 | 刃中に尖り刃をまじえる | 兼氏、兼定、村正一類など | 政常、大道、大村加トなど |
| 備前伝 | 匂い(におい=焼刃の形にそってみられる白い線)本意で丁子乱か腰の開いた乱刃のもの | 友成、正恒、包平など | 河内守国助、助広、水心子正秀など |